ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスの立ち上げ支援に関わっていると、ソーシャルビジネスのスタートアップがうまくいかない理由というのはある程度共通していることが気が付きます。
それらを忘れないようにメモ。
1.社会的課題を掘り下げられていない。
ソーシャルビジネスはなんらかの社会的課題を発掘し、それに対するイノベーティブな解決策を提示し、できれば収益化するという構造なのですが、そもそも社会的課題を発掘できていないケース。
「精神障害者のサポートをソーシャルビジネスでやりたいんです!」と言いつつ、精神障害者と直に話したことがないとか。はたまたムハマド・ユヌスに憧れ、とりあえずマイクロクレジットと言ってみるとか。
2.社会的課題と解決策がうまくつながっていない。
社会的課題はちゃんと理解しているのに、それに対するソリューションがイマイチずれているというケース。または具体化できていない。
大学生がもっと社会へ関心を持ってほしいということは課題として考えられるけれど、その解決策がセミナーとか。まず関心を持ってもらうために、facebookやTwitterで情報発信します!みたいなこともちょくちょく聞きます。
この1.と2.あたりの課題をまとめると「Theory of Change」という理論に当てはまるそうです。日本語では、社会イノベーションの拡散に関する事例研究あたりで読めます。
3.収益化する構造がない。
仕事として取り組めない、ゆえに継続性がなく、発展を諦める。
広告、助成金、行政の補助・委託、企業CSRなどのキーワードはよく聞きますが、あまりうまくいった事例は聞きません。といっても、事業収益のみでいきなり発展するソーシャルビジネスの事例はあまりないと思います。
このあたりはソーシャルビジネスに対するシーズ資金の不足だろうなと感じます。
4.マーケットがあまり広くないのに、収益化を急ぎすぎてしまう。
ソーシャルビジネスは必然的にニッチマーケットに近いところを広げていくことが多いのですが、収益化を急ぎすぎた結果、マーケットがうまく広がないケースがあります。
このあたりはネットベンチャー(まだこう言うのだろうか)が収益化よりも、さきにユーザー数を拡大させることを優先するのを見習うべきかもしれない。
5.そもそも十分な知識、経験がない。
ぼくたちもしゃらくを始めたときは、福祉や旅行に関しての知識はあまりありませんでした。それで非常に苦労しました。
福祉でも環境でも国際協力でもなんでもよいのですが、たんある思いつきだけではうまくいくはずもなく、その分野を学び、きちんと働いた経験があったほうが成功率は上がります。もちろん、そのような経験がなくても、成功する人たちはいます。
6.その他
企業のベンチャーと同じく、ソーシャルビジネスもソーシャルベンチャーという言い方があるように、同じような経営ミスがあります。
役員の選び方、マーケットサイズの測り間違い、当初のビジネスプランにこだわりすぎて成長を逃す、などなど。
個人的には、と前置きしますが、誰も考えつかないような斬新なアイディアを思いつくことを期待するよりも、ある社会的課題に対して、すでに取り組まれているアプローチを改善したり、視点を変えてみたりする方が結果的にうまくいくのではないかと思います。
最後に宣伝。このあたりの課題についてディスカッションするソーシャルビジネス・スケールアウト・シンポジウムを2月25日に開催するので、よければどうぞ。