はてなの界隈(ここやここで)一般社団法人Colaboの決算書についていろいろと意見が出ているので、NPOのコンサルタントとして長く働いてきた僕からざざっと感想を書いておく。ただ、決算書のみに焦点を合わせた記事なので、ほかの問題については触れない。以下、Twitterからのまとめ。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
一般社団法人Colaboの貸借対照表が公開されて、一部の界隈で議論されているので、見てきた。活動計算書(損益計算書に該当する)は事業報告書で以前から公開されている。ざざっと感想を書いておく。もちろん、会計報告が正しく行われているということを前提とする。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
「一般社団法人は非営利団体だから税金を払わなくてもよいのでは…云々」という議論を見掛けるが、一般社団法人も税法上の収益事業を行っている場合は、その事業部分だけを按分して納税する必要がある。Colaboの場合は、事業費の租税公課(2021年度は247万円)が該当すると思われる。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
また、管理費にも租税公課(たぶん収入印紙代など)があり、当期一般正味財産増減額の上にも、法人税、住民税及び事業税(法人住民税の均等割だろう)に分散して掲載されているため、判断しづらいのは事実。ただし、一般社団法人は、非営利型、共益型、その他型で形態が変わるため、
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
一概には言えないし、Colaboは定款を公開していないため判断できない。また、寄付金や助成金等は原則として課税されない。
人件費の支出が少ないという指摘もある。しかし、NPO(一般社団法人をNPOで括るかは緒論ある)にとって、人件費は最も負担となりやすく、かつ固定費であるため、
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
できるだけ圧縮しておくのは経営手法として間違いではない。そういった事情もあるため、NPOは求めるスキルの高さに比例した待遇を用意できないため、一般企業に比べて目劣りし、採用に本当に苦労する。もちろん、それはスタッフやボランティアをやりがい搾取してよいというわけではない。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
2020年度の当期経常増減額が1億2,000万円であり、過大ではないかという批判がある。この点は同意する。キャッシュを過大に溜め込むのは、財務会計的にも社会的な信用という意味でも問題であろう。ただし、2019年度の寄付金は900万円弱であったが、2020年度の寄付金は
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
いきなり1億2,500万円まで増加していることに留意する必要がある。想像するには、1)想定外の大口の寄付をもらうことができた(遺贈寄付など)、2)いきなり予算が大きくなりすぎて使途を検討できなかった、というあたりでは。2021年度の寄付は、2020年度の半額の6,900万円まで減少している。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
2021年度のパブリックリソース財団からの1億円は、たぶん、休眠預金事業のコロナ禍の住宅支援事業の一環だと思われる。休眠預金からの助成は、使途制約が厳しく求められている。要は、目的以外に使ってはいけない(ほかの助成金もそうなのだが)。故に、指定正味財産に置いたのであろう。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
会計的な処理としては妥当である。
これだけ利益が出ているのであれば助成金は不必要だろうという意見もある。確かに、利益が大きく出ているのであれば、助成金を申請しないようにするというモラルが必要なこともあるし、利益が大きく出ていることを理由に助成金の審査で落ちることもある。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
ただ、助成金はその性格上毎年度続くものではない。つまり、単年度である。事業の立ち上げ期にしか使えないものも多い。さらに、NPOが申請できるほとんどの助成金は、その事業単位で見ると赤字になるように設計されている。例えば、100万円で申請すれば、110万円を使わないといけない。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
つまり、10万円はNPOの持ち出しである。そのため、この点だけをもって、Colaboを批判することはできない。助成金貧乏という言葉があるように、むしろ助成金の制度を変える必要がある。
これだけ利益が出ているのに、なぜさらに寄付を募るのか、という点。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
これは、シンプルな理由。2021年度の決算書を見ると、経常収益が1億7,600万円あるが、そのうち、寄付金が6,900万円、助成金が4,600万円である。これらの収入は来年も確約されたものではない。つまり、水物である。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
上記で述べたように、助成金は単年度がほとんどだし、寄付も毎年確約されたものではない。NPOの財源を安定させるためには、多様な財源を確保していく努力をし続けることが必要なのである。
まとめると、Colaboの決算書を見る限りでは、特段、問題となりそうな点は見つからなかった。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
あえて指摘するのであれば、1)一般社団法人を規定する一般法人 第128条で求められる貸借対照表等の公告を行っていなかった、2)2020年度の過大な利益は決算を迎える前に慎重な検討および情報公開が必要であったかもしれない。
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— 小嶋 新 Arata Kojima (@aratakojima) 2022年11月30日
以上。ちなみに、僕はNPOで長く働いてきたが、Colaboとは直接的・間接的な付き合いがないことを述べておく。