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アメリカのアリゾナ州立大学大学院(オンライン)に合格するまで

2022年7月にアリゾナ州立大学 Master of Nonprofit Leadership and Management(オンライン)に合格しました。アリゾナ州立大学はASUと略すので、以下ASUで統一します。

現在40歳の社会人で、日本の大学院に入学したことはなく、短期も含めて海外留学したことはない僕が、どのように英語圏の大学院のオンラインコースを選んだのかについて、この記事で紹介します。

ASUとは

コースの詳細は大学のホームページを参照。

名前の通り、アメリカの州立大学のひとつ。各種ランキングではグローバルで100位から200位くらいに位置づけられることが多いようです。イノベーションについて高く評価されていると大学は謳っていますが、実際のところはよくわかりません。

Master of Nonprofit Leadership and Managementは非営利組織経営に特化したMBAコースみたいなもので、修士号を取得できます。リアルコースもオンラインコースもありますが、僕はオンラインを選びました。ちなみに、ASUの場合は、リアルでもオンラインでも同じ学位を取得できます。

なぜ、大学院に行くのか

理由はひとによって本当に千差万別でしょうが、僕の場合は、

  1. 日本で喧伝される「海外の成功したNPO」を解像度をもう少し高く理解したい
  2. 非営利組織の経営についての研究は日本であまり蓄積されていないが、英語圏は豊富である。英語圏の理論をきちんと知りたい
  3. これまで独学で研究活動を行ってきたが、ちゃんとした機関で研究手法を学びたい
  4. これまで英語学習に多大なリソースを投じてきたので、なにかしらの形にしておきたい
  5. 今後のキャリアを考えた場合、修士号を持っていたほうが選択肢は増えそう

なぜ、海外のオンライン大学院なのか

社会人が大学院で学ぶことを検討するときには、大きく4つの選択肢があると思います。日本の大学院に通学する、日本の大学院のオンラインコースに入る、海外の大学院に留学する、海外の大学院のオンラインコースに入る、ですね。

下記の図にそれぞれの特徴をまとめました(僕の主観です)。

各種大学の比較

各種大学の比較
  • 日本の大学院のオンラインコースは手軽であるけれども、受けたいコースがとにかく少ない
  • 日本の大学院に通学する場合、自分が受けたいコースが社会人向け(平日夜間や土日で卒業できる)に開講されていない、もしくは大学が集積する都市部に住んでいないと、選択肢としては現実的ではない(フリーランスや自営業などは可能かも)
  • 海外の大学院に通学する(=留学する)は学費の高さが半端ない(MBAなどであれば、転職して学費を取り返せる可能性はある)。また、社命でない限り、しごとを辞めないといけない

というあたりから、英語ができること、コースの当たり外れはあること、大学院を通じてコネができないことなど憂慮するべきポイントはいくつかありますが、社会人にとって、海外大学院のオンラインコースは十分に検討に値する選択肢ではないかと思っています。

どうやって、オンラインの海外大学院を探すのか

地道な作業です。オンラインのコースを示すキーワードは「distance learning」であることが多いので、「distance learning graduate コース名 国名」などで延々と検索しました(ASUだけは、ある学会のパンフレットに掲載されていて、ASU所属の教授の論文を読んだことが直接のきっかけです)。

僕は、それらでヒットした大学院をExcelで一覧にし、それらの大学の評価をさらに調べました。評価は、QS World University Rankings、Times Higher Education、USNews.comなどのグローバルな大学ランキングを参照しつつ、英国はラッセル・グループ加盟校であるかなども確認しておきました。オンラインの大学院はたまに学費目的だけのものがあるので、それらを排除したかったのが理由です。

ここで候補に上がった大学院から(幸い、非営利組織経営についてオンラインで学べる大学院は数少ない)、授業科目、入学要件、学費、口コミなどでトータルに判断しました。実際に受験した大学院数は、米国が1校、英国が3校です。

オンラインの海外大学院における資格要件は

大学・コース・国によっていろいろと違います。米国と英国の大学院を受験しましたが、それぞれ異なるものを求められました。その中で共通するものを書き出しておくと、

  • PS(Personal Statement) 志望動機書。長さは大学によってマチマチ。僕は、日本語で要点を書く→英語で全文を書く→DeepLやGrammarlyで英文チェック→英語の添削サービスを利用(EssayEdge)という流れで作成した。
  • CV(Curriculum Vitae) 一般的にはレジュメと同じく職務経歴書のことを示すが、CVはアカデミック向けであるため、構成や細部を書き換えた(計3ページになった)
  • 推薦状(1名から3名) 職場の元上司、共同研究を行ったことがある日本の大学の先生2名に依頼した。大学時代のゼミの先生も検討したが、卒業後20年経っているため、現実的ではないと判断した
  • 英語のスコア TOEFLやIELTSなど。僕は英国の大学院をはじめ狙っていたので、IELTSを選んだ。IELTS対策はほかの方のブログに投稿したので、そちらを参照
  • GPA 3.0以上 大学時代の成績がGPA3.0以上であることは、ほとんどの大学院で求められる(計算式にバラツキあり)。僕は2.55だったので、かなり厳しいかなと思っていたので、自分が研究活動や論文執筆の経験を持っていることをPSやCVで全面的に打ち出した
  • 各種書類 卒業証明書、成績証明書、パスポートなど

僕が今回受けた大学院では、GREやGMATは求められませんでした。

申請準備から合格までのスケジュール

海外のオンライン大学院は驚くくらいパッと受験することができます。一番処理が早かったところは、書類を提出後、1週間で合否結果が出ました。

僕の場合、直近のスケジュールは、2022年8月(英国の場合は9月が多い)入学を目指したので、

  • 4月から7月 IELTSの点数を引き上げる
  • 5月から6月 大学院の申請書類を作ったり、集めたりする
  • 7月 大学院にオンラインで申請書類を提出する。追加で必要な書類を求められた場合は、それに対応する
  • 8月 合否結果が届く

海外の大学院に留学する場合は、このほかにビザや住居の手続きなどが必要でしょうから、実際に留学できるのはたぶん1年後になります。けれども、オンラインの場合は、合格結果がPDFなど届くと、すぐにオンライン教育環境で必要なアカウントが発行され、「はい、いつでも、どうぞ!」みたいなノリで入学できてしまいます。

以上、ざざっとですが、社会人が海外の大学院のオンラインコースに入学するまでの流れを書きました。参考にしてください。

企業からNPOが寄付をもらう方法

futurelearnにて、The University of KentのHow to Fundraiseというコースを受講しているので、そのメモ書き。

  • Burlingame, D.F. & Young, D.R. (1996) Corporate Philanthropy at the Crossroads. Bloomington, IN: Indiana University Press.は企業がどのようにNPOにアプローチするのかについて4つのモデルを提示した
    • corporate productivity model CSR活動に勤しむことが本業の利益になる
    • ethical or altruistic model 自社があるコミュニティに貢献すること自体に価値がある
    • stakeholder model 従業員や顧客のニーズを満たす(ボランティアの機会を提供するなど)
    • political model 特に大企業において、政府の障害や規制を減じさせる
  • 企業が行う社会貢献の方法
    • direct donations 企業から財団などを通じてNPOを直接支援する
    • Gifts-in-kind 従業員によるボランティア、商品の提供など
    • Employee fundraising 自社の従業員によるファンドレイジングを支援する
    • Sponsorship イベントやニュースレターなど。企業がその顧客に寄付を依頼する場合も含む
    • cause-related marketing 特定の商品が購入されたときに、その一部がNPOに寄付される

パネルディスカッションの司会のコツ

「司会、上手ですね」と言われることが最近増えた。ふむ。僕は、早口、コミュ障気味、頭の回転が早いわけではない、空気を読めないなど、およそ司会に向いていないと思われる条件が揃っている。

しかし、司会をやることは多いのが事実だ。一般的に、社会人生活を送る上で司会を経験するという機会はそれほど多くない。講師業と違ってノウハウが出揃っているわけではない。司会を務め始めたときに「司会 コツ」とググっても、結婚式の司会のコツしか発見できなかった。

司会を務めるときにどんなことに気をつけているのか、何をポイントとしているのかを、パネルディスカッションの司会を想定して、そのノウハウを共有しておきたい。長文である。3,000字以上ある。

事前準備

○この場の目的や落としどころをある程度詰めておく

フォーラムやパネルディスカッションの企画者と、この場の目的や落としどころは事前に詰めておきたい。それによって進行が大きく異なるからだ。ただし、それは「この場を通じて、○○について啓発したい」では、不十分である。「参加者が○○を知ることで、○○という行動をとってほしい」と具体的なアクションを伴うもののほうがよい。

○パネリストの出演メリットを想定しておく

講演業を生業とする講師が出演する講演会とは異なり、パネルディスカッションに出演するパネリストは講演業を生業としていないひとが多い。そのため、出演を快諾した理由は、金銭的な報酬よりも、ほかのメリットを見出したのだと思われる。

そのメリットがなにかを司会は探っておく必要がある。自社商品のPRか、企画者と仲が良くて断れなかったのか、ほかのパネリストと関係性を作りたいのか、たんに面白そうと思ったから、など。そのメリットによって、そのパネリストがパネルディスカッションに望む姿勢を想像できるし、最も話したいテーマやエピソードを推察できる。

○パネリストについて学ぶ

パネリストのブログやソーシャルメディアを読む。本や雑誌を読む。インタビューを読む。企画者がなぜこのパネリストを選んだのかを教えてもらう。過去のフォーラムや講演会を調べる。パネリストに対する情報は多いほうがよい。時間が許す限り、パネリストについて調べておく。

○時間配分、大枠の質問、締めの質問を考えて、共有する

例えば、60分のパネルディスカッションでは、「Aという内容について20分、Bについて10分、Cについて30分」という大枠の時間配分を設定しておいたほうがよい。パネルディスカッションはとにかく構成が変わりやすいが、事前に大枠を設定したほうがタイムマネジメントをしやすくなる。また、その場の目的と関係するように、締めの質問についても考えておこう。そして、それらはパネリストにも事前に共有しておく。

■当日

○パネリストの「雰囲気」を知る

できれば事前準備で行いたいが、パネリストと司会が当日しか会えないことは多い。当日の議論を創造的にするために、パネリスト同士や司会が一切打ち合わせしないという方法もあるそうだが、それはリスクが高い。

司会はパネリストと数分でよいので、1対1で話す機会を作っておく。どんな話し方をするのか(論理的か、感情的か)、何に関心を持っているのか、事前情報と異なる点はないか、などを探っておく。それらはすべて「このひとは、どんな話題なら、適切に、かつ楽しく話してくれるだろうか」という点につながる。

■進行中

○基本的な事実確認から始めて、徐々に抽象化したり、そのひとの考えを聞いたりする

ひとは、自分がよく知らない話題について正解を求められることを好ましく感じない。例えば、初手の質問が「いまの日本経済についてどのような処方箋が必要ですか」はダメである。質問の順番を変えよう。

「コロナ禍において、あなたの団体が普段支援するご家庭には、どんな影響がありましたか」まずは事実確認。「その課題に対して、これまでどんな取り組みをしてきましたか」さらに事実確認。「経済的な問題に対して、企業や行政があなたの団体と一緒に取り組めることは何ですか」ここで意見を聞く。最後に「では、いまの日本経済についてどのような処方箋が必要ですか」この流れなら、これだけ抽象的な質問でも、パネリストが答えることもできるかもしれない。

司会はパネリストの情報を元に、このようなストーリーを作ることが求められる。

○質問→その理由や意図→質問という流れで、パネリストに質問する

パネリストを務めたことがあるひとは一度は経験したことがあるであろう。

「ああ、あのときの発言にこのことを入れ忘れた」「さっきの発言はもう少し整理すればよかった」「あの発言は誤解されたり、間違って解釈されたりするのでは」

パネルディスカッションは、その性質上、パネリストは司会の質問に対して、自分の引き出しから答えを引っ張り出してすぐに答えないといけないため、どうしても、このようなことが起こってしまう。また、事前にすべての質問をリストアップすることも難しい。

そこで、「Aさん、○○について伺いたいんですよ。なぜ、この質問をするのかというと、先ほどAさんが○○とおっしゃっていたので、云々…。そこで、Aさんにとって○○についての評価について教えてください」といった文章構成で司会が質問する。すると、司会が質問の理由や意図を説明している間に、パネリストは発言を検討する時間ができるため、より的確な答えを返しやすくなる。

ただし、その質問に対して普段から熟考している方、超絶頭がよい方は、こういう構成を必要としない。

○司会のノートは次の質問や構成、キーワードをメモする

司会はパネリストの発言内容をメモするべきだ。しかし、それはすべての発言内容ではない。要点でもない。キーワードである。パネリストが発言した大事な点のみをキーワードとしてメモしておくと、あとで引用したり、質問に使えたりする。また、それらのキーワードを拾っていくことで、締めの質問や結論を導くことも可能だ。

さらに、パネリストの回答を聞きながら、次にするべき質問候補(次の質問候補が1つしか思い付かない場合は、議論が十分に展開できていないと判断するべき)や、それらをどんな順番で展開するかをメモしておく。そして、その質問候補や順番は、パネリストの回答によって、どんどん入れ替えたり、追加・削除しないといけない。

○「…はどう思われます?」や「はどうでしょうか?」は極力使わない

司会は上記の質問方法を多用したくなるが、使わないほうがよい。上記の質問のやり方では、質問の解釈に大きな振り幅を生んでしまうため、司会が問いたい意図とズレる可能性が高い。

ちなみに、パネリスト同士が質問し合うコーナーを設けることもあるかもしれないが、個人的には推奨しない。それまでの議論が分断される、内輪話になるなどいくつかリスクがある。パネルディスカッションが終わってからや、控室でやればよい。

○大きめにジェスチャーする

パネリストは自分の発言が参加者に正確に伝わっているかが気になるものだ。しかし、多くの参加者は理解していたとしても理解していなかったとしても、仏頂面で聞いている。

せめて、司会は大きめにジェスチャーして、聞くようにしよう。「俺は、今日はアメリカのドラマの出演者だ」と自分に言い聞かせ、深くうなずき、よく笑い、分かりやすくしかめっ面をしよう。

○パネリストには平等に発言機会を与える

司会は、よい回答をしてくれたり、笑いを取ってくれたりするパネリストに頼りたくなる。困ったときはこのひとに質問しようと思う。それは避けよう。大半の参加者はAさんを見に来ているかもしれないが、Bさんを見に来たひともいるはずだから。

ひとりひとりの発言時間や発言数を完璧にコントロールすることは難しいが、参加者がそれぞれのパネリストの発言を均等に聞いたと思えるように進めよう。ただし、「Cさんはそこまで話せないと思っていたが、めっちゃええこと言うな」と感じたら、多少の傾斜は設けてもよい。司会がそう感じたことは、参加者もそう感じているはずだから。