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NPOやソーシャルビジネスの創業・経営・マネジメント

アクセシビリティとボランティア

つい先日、IBM1から面白いニュースが出ていましたので、その背景の考えと応用を考えてみます。

IBMが新興国にボランティアを派遣する


ニュースはこれです。asahi.com(朝日新聞社):IBM若手社員、新興国でボランティア 日本からは5人 - ビジネス
米IBMは7月から、世界各地の若手社員による混成チームを新興国や途上国に送り、情報技術活用のボランティア活動をさせる取り組みを始める。170カ国で38万人が働く多国籍企業として、人材育成と新興国でのビジネス拡大の一石二鳥を狙う。(中略)

一方、ITインフラの需要が伸びる新興国での事業拡大も視野にあり、「新興国で求められるニーズを現地で学ぶ。人を通じIBMを知ってもらう機会になれば」(日本IBM)という。


このニュースはCSRの一環としても考えられますし、また新興国で働くことによる人材育成という側面も間違いなくあります。しかし、重要なのは新興国での現地ニーズを捉えること、まさしくこれでしょう。

新興国にボランティアとして派遣され、その現地ニーズを的確に捉え、いずれはIBMの新しい事業を作り上げる。一方で、現地の人たちとのコネクションを作る。ボランティアといいながら、実際は投資に他なりません。

ボランティアというのは実は非常に便利なワークスタイルです。例えば、Aさんがある知識を得たいときに、その知識を扱う会社から知識を吸収するためには、就職するしかありません。

しかし、ボランティアであれば、NGONPOに合法的に一時的にだけ入ることができ、自由な時間に活動できるというメリットがあります。わざわざ転職する必要はないのです。もちろん交通費だけでも手に入れば万々歳で、ボランティアで生活することは難しいです。

アクセシビリティをボランティアで学ぶ


こういったIBMのボランティア形態は会社全体で取り組むことに意義があります。しかし、まずは個人から始めてみたいという方もいるかと思います。そこで、こういったボランティアのワークスタイルを使ってできることを考えてみます。

結論から先に書いておくと、僕はWebサイト制作会社やIT関連のデベロッパーやデザイナーがシニアや障がい者にパソコンやネットを教えるのが面白いのではないかと思っています。というよりも、実はこれ自分がやっていることなんですが(笑)

どういうことかと言うと、ネットやITの分野にはアクセシビリティユーザビリティという分野があります。NPO業界で言えば、ユニバーサルデザインやバリアフリーのことです。

しかし、こういったものに対応した商品のターゲットはシニアや障がい者が主なのですが、大体においてWebサイトやIT分野で活躍する人たちは若く、特に障害も持っていません。ここで、受け手と作り手の間にギャップが発生します。

つまり、Webサイト制作会社やIT関連で働く人たちは、もちろんアクセシビリティやユーザビリティを真剣に学んではいますが、なかなかそれを実体験することができません。故に、残念ながら机上の理論になることが少なくありません。

だから、ボランティアをやってシニアや障がい者にいろいろとパソコンやネットを教えながら、彼らのパソコンの操作性を観察し、自身の知識や経験をリアルな形で補っていけばよいのです。毎日する必要もありませんから、僕も1週間か2週間に1度くらい、2時間程度を割いているのみです。しかし、その効果は抜群です。

自分がデザインやコーディングをしているときに「あれ、これってアクセシビリティ的にどうなんだろう」とふと疑問が沸いたときに「そういえば、この前教えたAさんはこの操作に詰まっていたな」と具体的な個人をイメージしながら仕事に取り組むことができるからです。この効果は非常に大きい。

ボランティアといえばどうしても善意的なものをイメージする方が多いですが、決してその意思だけで行う必要はないと思います。ボランティアは自己投資。そう思えば、これだけ費用対効果が高い活動は珍しいと思うのです。