Trans

NPOやソーシャルビジネスの創業・経営・マネジメント

地域再生の罠/久繁哲之介

 ・地域再生の施策は提供者側の中高年男性だけで策定されることが常で、都市の魅力や問題点を発見するためには、消費者側、つまり市民の、とりわけ若者や助成の行動や会話に五感を傾ける必要がある。

・成功事例集とは提供者の目線から事例を選び、そのよい点だけを記述して成功だと賞賛するプロパガンダかコマーシャルである。例えば、月に1度しか集まらないイベント。
・行政や専門家は新しい施策を考えるときに、ほかの地区が追随したくなるようなモデル地区として前例化することを目論む場合が少なくない。自分たちの施策が広がるかどうかはモデル地区の成否にかかるから。つまり、施策の提供者はモデル地区を成功事例と言ってもらえないと困る。
・その上、模倣が簡単なモデルに各自治体の取り組みが集中し、表層的な模倣の再生策が乱立する。
・商店街の外装をレトロっぽく魅せるハコモノの改築やデザインは一度限りの観光客を呼びこむには有効だが、リピートにはつながらない。
・西欧では政策的に、水辺やストリートなどの公共空間にカフェを出店するのを促すなどしている。
・西欧人がコンパクトな環境に住むことは、彼らのライフスタイルを実現し、幸せになることにコンパクトシティの本質がある。例えば、イタリアでは、ランチを友人と2、3時間ゆっくり摂るなど。
・市民が主役となって顧客の心を捉えるソフト事業を地域再生の核に据え、土建学者や自治体が上流に関与しない地域は活性化している。
 
鹿児島などがまだうまくいっている理由
・大型商業施設への依存が低く、大都市への憧れも弱い。
・地域愛が高く、他都市の模倣を好まない。
・市民は交流目的での飲食店利用が多く、それが飲食店の利益と街のにぎわいにつながっている。
 
施策ポイント
・車優先空間から人優先空間へ
・出店者一人にリスクを押し付けず、市民が安心して・連携して出店できる仕組みをつくる
・店舗個別の穴埋めをする発想をあらため、地域一帯の魅力を創造することを考える
・商店街の位置づけをモノを売る場から交流・憩いの場へと変える
地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)

地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)