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WebアクセシビリティからWeb Adaptability(アダプタビリティ)へ

Webアクセシビリティの限界を補完するためのWeb Adaptability(アダプタビリティ)。詳細はまだ分かりませんが、これからのキーワードの1つになるかもしれません。

アクセシビリティの限界

Web Adaptability(アダプタビリティ)とは、“From Web Accessibility to Web Adaptability” Paper Published « UK Web Focusで発表された概念です。著者のBrian Kelly氏によるサマリーは、“From Web Accessibility To Web Adaptability”: A Summaryで読むことができます。

Brian Kelly氏はアクセシビリティについて次のように述べています。

"disability results from the interaction between persons with impairments and attitudinal and environmental barriers that hinders their full and effective participation in society on an equal basis with others". Disability is therefore a social construct and not an attribute of an individual. In particular, resource accessibility is an the matching of a resource to an individual's needs an preferences. – and is not an attribute of a resource.

障害とは、個人の資質に属するものではなく、社会的な構成物である。特に情報リソースのアクセシビリティとは、リソースそのものの特性ではなく、個人のニーズにマッチさせることである。

From this perspective we see the limitations of the WAI's approach to accessibility, which regards accessibility as a characteristic of the resource (which should conform to WCAG guidelines) and the tools used to create the resource (which should conform to ATAG guidelines) and view the resource (which should conform to UAAG guidelines). In a previous paper we have described in more details the limitations of the WAI approach to accessibility

この考え方にたてば、WAIのアクセシビリティへのアプローチは情報リソースの特性に焦点を合わせており、著者たちはそれに限界を感じている。

アクセシビリティの視点

著者はアクセシビリティを3つのアプローチとして捉えています。

  1. Web accessibility 1.0:WAIのようなアプローチ
  2. Web accessibility 2.0:特定のグループや領域に応じ、そのグループごとによりよいユーザエクスペリエンスを提供するアプローチ
  3. Web accessibility 3.0:より個人のニーズや好みに焦点を合わせたアプローチ

ただ、このように書いてしまうと、2.0や3.0がより進んでいるという印象を与えかねませんが、実際は相互に補完するものであると著者は述べています。

Web adaptabilityとは、

他者と同じ条件を持ちながらも、障害・態度・環境などのバリアによって社会的な参加を拒まれている人たちをサポートしようとする試み

であると定義づけています。

Web adaptabilityの事例

  • 聴覚障害を持つ人たちのE-learningシステム。デザインや開発プロセスにユーザを巻き込み、WCAGのガイドラインよりも特定の障害を持つ人たちのユーザビリティや満足度を最大化させることに注力した。
  • 聴覚障害を医学的な障害と見なすのではなく、文化だと位置づける。Deafness and the User Experience日本語訳)が参考になる。
  • オーストラリア政府にとってWCAGのガイドラインを遵守することは時間的にも人材的にもリソースが足らなかった。Web adaptabilityのアプローチを用い、期限通りに且つ予算内で、ユーザビリティもアクセシビリティも向上させる。

などです。

WebアクセシビリティとWeb adaptabilityを一緒に。

現時点で論文の本文を読んだわけではないので、詳しいことはまだ分かりませんし、具体的なアプローチをどうすればいいのかも分かりません。

しかし、Deafness and the User Experience日本語訳)を参考にすると、動画にキャプションさえつければOKというわけにはいきません。障害ごと、いやユーザごとの特性を踏まえた上でソリューションを提示しなければいけないことが分かります。

まとめると、WCAGを参考に基底的なアクセシビリティを向上させる。その上で、Web adaptabilityでユーザごとに最適化したユーザエクスペリエンスを提供する。そんなことができるようになるのかもしれません。

先ほど論文を送ってくれとメールしておいたので、まずはそれをじっくりと読んでから(誤読なく読めるのかめっちゃ不安)、いろいろと考えたいと思います。