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当事者が参加していないWeb標準の議論

いつの間にか周りで議論が巻き起こり、気が付いたら当事者の意見は反映されていない。それは、バリアフリーでも、Web標準でも、アクセシビリティの議論も一緒なのかもしれない。


Web標準で制作されているWebサイトがどんどん増えている。どこかのサイトがリニューアルされたと思ったら、やはりWeb標準で作られていたり。最近、兵庫県のホームページもWeb標準的にリニューアルされた。


Web標準の話では決まって、JISから発表された「WebコンテンツJIS」が引用される流れになっている。その中では、「高齢者や障害者でも利用しやすいようなWebサイトの設計を行うべきだ」という意見が出されているわけだが、前々からずっと「じゃあ、具体的にどうすりゃいいんだ」という疑問が頭の中をグルグル周っていた。そこで、はてなの人力検索でも質問したことがある。

http://q.hatena.ne.jp/1153710195
音声ブラウザの動作における、title、alt属性についてお伺いしたいことがあります。

img要素などを使う際に、altは必須、もし何も説明文を掲載しなくても、「alt=""」で空白にする理由は分かります(ファイル名が読み上げられてしまうから)。

では、altとtitleってどういうふうに使い分ければいいのですか。(特に、imgとa要素において)議論の対象は、
①altとtitleは、どちらも音声ブラウザで読み上げられる?それなら、「普通に画像の説明をする」場合は、どちらを使うべき?「alt="", title="説明文"」?もしくは、「alt="説明"」のみ?
②別に飛ばしても構わない画像は、「alt=""」のみ(メニューのアイコンなど)?
③でも、ツールチップを表示したい、その上で音声ブラウザにも対応したい場合は、「alt="説明", title="説明"」?でも、この場合、音声ブラウザはどちらとも読み上げてしまう?(特にa要素で使う際に、よく悩んでしまいます)

このへんのうまい使い分けなどを知っている方いらっしゃいましたら、ぜひとも教えていただきたいのですが。

今になって、なぜ、僕は「実際にアクセシビリティというものをサイトに反映させるためには、何が適切な方法なのか分からない」という理由が分かった気がする。それは、Web標準の議論から、「高齢者や障害者」、つまり当事者からの意見が全く聞こえてこないのだ。だから、上のような「アクセシビリティの重要性はわかる。でも、実際にどうすりゃいいんだ?」という疑問が生まれてくる気がする(もちろん、僕の勉強不足もあると思うのだが)。


さて、当事者の意見が聞こえない、反映されないというのは意外とよくあることである。例えば、神戸空港。僕は完成直前に一度見学に行ったことがあるのだが、その時に視覚障害を持つ知り合いも一緒に来ていて、一言。「これ、エレベーターの上がる、下がるの点字が逆なんだけど」。


付け間違い?でも、そういった点字の間違いは随所にあった。車椅子の利用者にとっても、車椅子トイレの入り口の幅が十分に取られておらず、車椅子が入りにくい、とか。


要は、建設前から障害者の意見が十分に取り入れられておらず、完成直前になってから、障害者を呼び意見を聞こうとする。そこで、課題が発覚しても、残念ながらトイレの入り口をガバッと開くわけにはいかない。「じゃあ、これは次の課題ということで」っていうことになる。もちろん、ほかの施設や建物の建設では障害者の意見を設計段階からうまく取り入れることにより、建物の面積やコスト的なものもクリアした上で、障害者の意見とマッチできることもあるらしい。(特に車椅子トイレなどは利用する人はそんなに多くない割に、面積を広く取ってしまうので、費用対効果はあまりよろしくないらしい)


Web標準アクセシビリティのことが話題に上がる時、本当に当事者の意見は取り入れられているのだろうか。そういったアクセシビリティの具体策としてよく使われるのが、

  • フォントサイズをブラウザではなく、サイト内で変更できるJavaScriptの設置
  • 視覚障害を持つ人のためのページ内リンクの設置
  • たまに、Zoom Layout

このあたりがよく設置されているのだが、本当にそれでいいのだろうか。


例えば、font-sizeを取ってみても、僕の周りの高齢者や障害者の意見はバラバラだ。


高齢者
Aさんは自分でブログを書くなど、ネットにはかなりはまっている。この人は、font-sizeが100%(16px)あたりでは文字が大きすぎて、逆に違和感を感じる、とのこと。この人のブログは、現在12pxあたりのfont-sizeで運営。一方、あまりネットをやらないBさんはIEを利用しており、ブラウザの文字サイズを大にして利用中。


じゃあ、せっかく用意したJavaScript使ってないの?ええ、使っていません。たぶん、そんな機能をサイトが持っていることを知らないわけだ。


視覚障害者
Cさん、まずalt属性は何とかしてほしい。Dさんは、いきなりページ内リンクがあっても、それがページ内リンクかどうかが分からず、無視してしまう。また、ページ内リンクの文字数が少なすぎて、クリックが間に合わないことも。


ページ内リンクを持っていても、使いにくいものはたくさんある。本当に、「skip to contents」という表示で、実際に利用する人は分かるのだろうか。


肢体不自由者
要は手や足に障害を持つ人。この人の場合は、手があまり起用に動かないため、どうしても小さなfont-sizeのリンクはクリックしにくくなる。


Web標準アクセシビリティが指す障害者=音声ブラウザ利用者という雰囲気だが、実際にはもっと数多くの種類の障害がある。


普通の人

こにのつぶやき: 文字の大きさ
文字が小さいばかりに本当はもっとアクセス数が稼げるのに勿体無い。それとも敢えてそういう障壁を設定して読者を選別しているのだろうか?小さい文字でも読みたい!と思う情熱がある人、小さい文字でも苦もなく読める視力の良い人のみ対象に細々と運営していきたいという意思表示なのだろうか?

と、まあこんな感じなわけだ。


Web標準はバリアフリーというより、ユニバーサルデザインだ」という議論を一度どこかのサイトで見掛けたが、僕はまだまだそんなレベルにまでは至っていないと思う。まずは、当事者の意見を真摯に聞いて、1つ1つ改善策を採用し、Webで共有する。そんな泥臭い作業が必要だと思うのだけど。