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『音訳マニュアル』レビュー

音訳マニュアル―視覚障害者用録音図書製作のために (音訳・調査編)

音訳マニュアル―視覚障害者用録音図書製作のために (音訳・調査編)

  • 作者: 全国視覚障害者情報提供施設協会録音委員会音訳マニュアル〈音訳・調査編〉改訂プロジェクト委員会
  • 出版社/メーカー: 全国視覚障害者情報提供施設協会
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本
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音訳マニュアル―視覚障害者用録音図書製作のために 処理事例集

音訳マニュアル―視覚障害者用録音図書製作のために 処理事例集

  • 作者: 全国視覚障害者情報提供施設協会録音委員会処理事例集プロジェクト
  • 出版社/メーカー: 全国視覚障害者情報提供施設協会
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 単行本
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本書は、音訳ボランティアの人たちにとってのガイドラインのようなもの。音訳とは、

音訳(おんやく)とは、インクを用いて表現された文字や図表など、視覚など聴覚以外の感覚器に依存する媒体からの情報取得が困難な人々のための情報保障形態のひとつとして、これらの情報を音声化することである。狭義には、肉声による音訳を指す。文芸作品などの文章を声に出して読む朗読との違いは、音訳はインクなどを用いた表現との同一性保持が要請され、音声化する人物による解釈介入の極小化が要請される点である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%B3%E8%A8%B3

という意味で、音訳ボランティアの人たちのために発行されました。

ざっと読んだところ、Web関係者にも役立つかなと思います。特に、

  1. alt属性の書き方
  2. 音声スタイルシート

に関心を持っている人は一読してみてよいかもしれません。

alt属性の書き方

単純に言ってしまうと、音訳とは書籍のテキストを音声で表現することなわけです。Web関係者にとっては、音声ブラウザやスクリーンリーダーがやっていることを、人間がより的確に行っていると考えてもらえれば分かりやすいでしょうか。

文章などのテキストはたんに読み上げればいいわけですが(ただし、テキストの読み方については後述します)、図や表、写真をどのように音声で表現するのかという問題にぶつかるわけです。これは、alt属性の代替テキストと一緒です。

本書では、どのように図や表、写真を音声化すればよいのかについて、事例を上げて細かく解説しています。もちろん、書籍とインターネットというメディアはその利用方法が異なるので、すべてを参考にすることは難しいかもしれません。ただ、図や表、写真を音声のみで理解するということは、一体どういうことなのかをイメージするきっかけにはなるかもしれません。

音声スタイルシート

音声スタイルシートとはこれのことです。CSS3では、CSS3 Speech Moduleと呼ばれていますね。

数年前に初めてこの仕様を読んだとき、僕は本当に意味が分かりませんでした。hn要素やstrong要素をとりあえず強調して読み上げるだけでよいじゃないか。なぜ必要なのかが分かりませんでした。本書がこの疑問に答えてくれました。

引用文

例えば、文書内に引用文、blockquote要素があったとします。引用文の役割は本文と異なるので、その文章が引用文であるということをユーザに伝えないといけません。音声ブラウザによっては、bloquote要素の開始と終わりの箇所で引用であることを読み上げてくれるかもしれません(インヨウハジメ インヨウオワリ)。しかし、読み上げてくれない音声ブラウザであれば、それをほかの方法で伝える必要があります。

そこで、ピッチ(声の高低)を使い分けます。引用文に関しては、ピッチを高くして読み上げることにより、ユーザが引用文であることを理解できる一助になるのです。

ルビ

また、ルビ、ruby要素についても考えてみます。ルビは、難しい漢字に読み仮名を振ることもあれば、ある言葉をあえて異なる読み方をさせたいときにも使われます。すげえベタで申し訳ないんですけど、「本気」と書いて、「マジ」など。

では、音声ブラウザはrt要素のみを読み上げるべきでしょうか。それともrt要素を読み上げたあとに、漢字本来の読み方も読み上げるべきでしょうか。「マジ」だけ?それとも、「マジ ほんき」と読み上げるべきなのか。

本書では、後者の場合において、「ほんき」にピークを付けないと説明しています。つまり、アクセントを付けずに読むことによって、直線の言葉を本来の読み方で読み上げたということを暗示できるわけです。

まとめ

このように、音声スタイルシートを適切に用いることによって、UAに左右されずによりよいユーザエクスペリエンスを提供できるかもしれないわけです。こういう視点を提供してくれたのが、『音声マニュアル』なわけです。

ちなみに、この本は@motchieさんから教えてもらいました。@eriverさんも書評を書かれているので、そちらも参考にしてください。