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NPOやソーシャルビジネスの創業・経営・マネジメント

The Emerging Ecosystem of Entrepreneurial Social Finance in Asia

シンガポール国立大学が件名のワーキングレポートを公開しています。ざっと要訳しておいたので、共有します。ソーシャルファイナンスに関心がある方は原文をぜひ。

ソーシャルファイナンスの種類

  • Grant Making:寄付者には金銭的リターンなし
  • Social Investing:金銭的リターンとソーシャルグッドを融合、社会的責任投資ファンドとか
  • Venture Philanthropy
  • Impact Investing
    下の2つは、上の2つよりもっとエンゲージメントの度合いが高い。Venture Philanthropyはリターンをほとんど期待しないが、Impact Investingはリターンを期待する

アメリカのVenture Philanthropy

1990年代に生まれた

財団が自分たちの助成制度に疑問を持ち始め、代替的な戦略を探していた

起業家から篤志家に転向した人たちからもお金をより効果的に使うための方法を探していた

はじめて、Venture Philanthropyを始めたのはEdna McConnell Clark Foundation。1999年により少数のNPO、特にインパクトを与えそうな団体に助成。加えて、Bridgespan Groupがコンサルを提供

Philanthrocapitalismという言葉で2008年に議論されたことも

この分野で有名な本

  • Give Smart: philanthropy that gets results (Tierney & Fleischman, 2011)
  • Do More than Give: six practices of donors who change the world (Crutchfield, Kania & Kramer, 2011) 
  • Giving 2.0: Transform your Giving and Our World (Arrillaga-Andreessen, 2011)

ヨーロッパでのVenture Philanthropyの出現

2000年ごろから議論され始める

European Venture Philanthropy Association(EVPA)が2004年に設立され、メジャーになる

2013年中に、Private Equity FoundationとImpetus Trustが合併する予定

EVPAがVenture Philanthropyを盛り上げる舵取りをしていた。アメリカはコーディネート役がいないまま急速に発展

2010年には17つのヨーロッパの国で48のファンドが運営されている

Impact Investing

2008年ごろに、起業家的な組織に投資することで財務リターンを得られるんじゃないかということで言葉が作られた

Global Impact Investing Network (GIIN) が主に率いてきた一連の動き。GIINはJPモルガンロックフェラー財団、USAIDが2009年に設立

2011年のImpact investing’s flagship global conference – SOCAP –には50カ国以上1,400人が参加

インパクトを優先させる投資家とリターンを優先させる投資家がおり、それぞれ求めるリターンの割合が異なる

起業家的ソーシャルファイナンスの特徴と運営の原則

  • 投資として資金を提供する
  • プロジェクトよりもキャパビルやインフラにお金を投じる
  • アウトカムにフォーカスする
  • お金を投じる側と投じられる側の関係性を深くする
  • プロジェクトではなく、リーダーとチームに投資する

ソーシャルファイナンスにとって魅力的な投資先

  • 特定の社会的課題を革新的な方法で解決する。できれば、市場の力をうまく使っていると良い
  • 期待されるソーシャルインパクトがセオリーオブチェンジに従っており、アウトカムも計測できる
  • 創出された社会的価値をスケーリングできる
  • スケーリングに備えたチーム、スタッフなどを準備できる
  • 特にリーダーが投資家のアドバイス等に貪欲であり、投資家としても投資したいと思わせる

ベンチャーフィランソロピーの特徴

  • 自分たちで投資対象を探しに出かける
  • スクリーニングに時間と労力をかける
  • ポートフォリオマネジャーがかなり密にコミュニケーションをとる
  • ポートフォリオマネジメントのポイントは団体の評価をどうするか。SROIを使うこともあれば、New Profitなどはバランススコアカードの改良版のようなものを使っている。
  • ベンチャーフィランソロピーの収入は、Venturesomeは準株式(quasi-equity)を試験している。例えば、ソーシャルエンタープライズと契約を結び、毎年の収入の2%を得る権利を得るなど。

ソーシャルファイナンスのエコシステム

  • 財務資本の供給サイド(財団や投資家など)
  • 財務資本の需要サイド(社会的企業NPOなど)
  • 中間支援組織
    Impact Investment Exchange Asiaのような市場
    B Lab、SROI Networkなどの評価指標づくり
    Asian Venture Philanthropy Network、Ashokaなどの支援者  
  • 政策環境
    税制や制度の有無
    直接的な行政からのファンディングの有無

当論文におけるソーシャルファイナンスの背景

アジアにおける富の創造とフィランソロピー

アジアは資産を1億円以上持つ富裕層が337万人おり、北米やヨーロッパより多い

しかし、アメリカの富裕層は41%がフィランソロピーに使っているが、香港は16%、シンガポールは23%。それでも最近は富裕層による財団への寄付なども多い

インドは家族経営の企業によってフィランソロピーが行われる

中国では、公募基金会と非公募基金会があり、ほぼ同数の1,000ずつくらいか

フィランソロピストの新しい世代

ファミリービジネスのリーダーの世代的変化(成果が上がっていない財団を改造する)

会社のオーナーがイノベーティブなモデルを会社の財団で使う

プロボノ的な起業家、投資家、コンサルタントの存在

すでに存在する財団が自分たちでベンチャーフィランソロピーを作ったり、外部のベンチャーフィランソロピーと一緒に立ち上げたりする

ソーシャルビジネスを支援する中間支援組織もグルーバルになっている。Ashoka、Schwab、Net Impactなど

アジアはようやくベンチャーフィランソロピー間のネットワークができてきて、経験やノウハウを共有する場がある

アジアのソーシャルファイナンスのマッピング

ソーシャルファイナンス、ソーシャルエンタープライズ、中間支援組織、アカデミックなどの紹介