シニアはログインでつまづく?!
最近、シニア向けのあるWebサービスを構築している。その中で、シニア(特に、団塊世代、もしくはそれ以上)の方が、どういったところでWebサービスにてつまづくのかが少し分かってきたので、自分の備忘録も兼ねてメモしておく。
先に言っておくと、シニアはまずログイン、もしくは新規登録でつまづく。「中に入れない」「何かパスワード間違えているみたいなんだけど」そういった質問が、どんどん寄せられる。このWebサービスを構築する前に、できる限りネット上でシニアのネット行動特性みたいなものは調べてみたが、その多くは「ログイン後」、もしくは「ログインする必要がないサイト」のことだったと、今更ながら気が付いた。例えば、
そう、シニアのネット上の行動特性はある程度研究が進んでいると思うし、そのデータもある。また、Web標準の議論に従えば、Web標準で構築されたサイトというのは、ユーザビリティーなども高く、使いやすいはずだ。でも、そんな議論はおかまいなしに、シニアはログインと新規登録でつまづく。そのつまづきのポイントを列挙しておく。これから、シニア向けのサービスを考えている皆様はぜひとも参考にしてほしい。
1.そもそも自分のメールアドレスを知らない。
驚くことなかれ。自分のメルアドを知らないシニアは意外に多い。「え、でも、俺のお父さんやお母さんは、普通にメールでやり取りしてるよ」なぜ、そんなことが成り立つのか。答えは簡単。
自分のメルアドを知らなくても、メールのやり取りはできるから。理由は、「デスクトップの黄色の時計のアイコン、もしくは手紙マークのアイコンをクリックする」と覚えているから、もしくはそう教わっているから。このアイコンはOutlookやOutlook Expressのことである。要は、それをクリックすれば、自動的にメールが受信されると覚えているので、そもそも自分のメルアドを知らなくても、メールはやり取りできる。アドレス帳やメールの設定なんかはISPや友人、子どもなんかがやっていれば、そもそも自分のメルアド記憶するという作業を必要としない。結局、自分のメルアドというものを意識せずに、メールがやり取りできる。でも、Webサービスを登録する際には、大体メールアドレスを必要する。結果、「自分のメールアドレスって、どうやったら分かるの」なんていう質問が舞い込んだりする。
2.ログインする際に、「.(ドット)」と「,(コンマ)」を打ち間違える。
特に、そのWebサービスにおいて、自分のメルアドがID代わりになっている場合、このミスが意外に多い。で、これはWebをよく使う人でもはまってしまうことがある。なぜなら、「自分は慣れているのだから、メールアドレスを打ち間違えることなどない」と思っているから。その結果、パスワードは合っているのに、無限ループにはまり込む。
特に、事態をややこしくさせるのが、ブラウザのオートコンプリート機能。フォーム部分にアドレスなどを一度打ち込んでおけば、それを自動的に記憶してくれる機能。例えば、「hogehoge@hoge.com」なら「h」と打つだけでメールアドレスが勝手に入ってくれる。これを始めの段階で「.」と「,」を打ち間違えて、このオートコンプリート機能の部分をチェックせずに、ログインできず、延々とパスワードをとっかえひっかえ打ち直すという作業になる。その上、元々「.」と「,」は見分けにくいので、なおさらそのミスに気が付きにくいし、自分がメールアドレスを打ち間違えるわけがない、という固定観念がメルアドを打ち直すという作業を行わせにくくする。
3.半角と全角、大文字と小文字を勘違いする。
これもよくあるミス。ログイン時に、パスワードを全て全角で入力してしまったり、パスワードを再発行した際の新しいパスワードに大文字が入っているのに、全て小文字で打ち込んだり、など。このあたりも無限ループに簡単に入り込める。
少し話は変わるが、シニアは自分がログインできないと知ると、たぶん僕らみたいな若い世代よりも、すぐに「パスワード再発行」を行ってしまうように思う。僕らの世代なら、「メルアド打ち間違えたか」とか「キーボードが全角にでもなってるのか」と色々試してみると思うが、シニアはそんなことを全く試さずに、まず「パスワード再発行」に踏み込む。このへんも考えないといけない。
似たような間違いとして、パスワードを再発行した際に、「g」と「q」を読み間違えるとかもある。意外に、シニアはメールのパスワードをコピーして、フォームに貼り付けるという作業をしないことが多い。自分で打ち込んで、間違える。
また、メールに来たパスワードを貼り付ける場合も、前後の余分な空白までもコピーして、貼り付けてしまうこともあるので、その点も注意すること。
4.え、ブラウザはIEじゃないの?
これは特殊な事例かもしれないが、一応書いておく。シニアというより、そんなにネットをガリガリ使わない人のブラウザは大抵IEだと思う。そのため、電話で使い方を説明する時は、僕も普段はFirefoxを使っているのだが、IEを別に立ち上げて説明することが多い。どうしても各ブラウザのツールバーの表記が違うので、説明が難しくなるからだ。
しかし、たまにそんなシニアでもブラウザがIEではないことがある。最近、質問があったシニアはOperaを使っていた。「そこのですね、お気に入りをクリックしてください」「お気に入りなんてないよ」そんな会話が延々と続いた。そのあと、ほかの説明していると、どうやらOperaを使っているらしいことに気が付いた。
ほかにも、IE6が最新バージョンの時に、IE7 RC1を使っているシニアもいた。なぜ、そんなことが起こるのかというと、実家にいるパソコンに詳しい息子、もしくは娘が「自分も使いやすい」と理由で、IE6をやめて、「お父さん、お母さん、これからインターネットを見るときは、このアイコンをクリックしてね」なんてことを言うからだ。そのパターンに陥りやすいのが、特に実家にある1台のパソコンを共有している家庭。で、そのアイコンがOperaであったり、IE7 RC1であったりするわけだ。
シニアはよほど詳しくない限り、IEとOperaの違いなどは分かりはしない。子どもの意見に従う。そのため、その人自身は詳しいわけではないのに、そんなブラウザを使うことが発生する。そのため、1-3までのことを説明した後、それでも何かしら説明が食い違う場合は、ブラウザそのものも疑ってみる必要があるのかもしれない。
以上、現状で分かっている範囲でのシニアがログインや新規登録でつまづく原因である。あと、付け加えるのなら、シニアが自分で「パソコンに詳しい」と言っている人は、少し疑ってかかったほうがよい。本当に詳しい人もいるが、ネットに詳しいわけではなく、WordやExcelにだけ詳しい人もいるからだ。WordやExcelに詳しいからといって、Webサービスに詳しいわけではない。そんな人も上のどれかでつまづくことがある。
追記:11月15日20時9分
さっきも電話で延々と「ログインできない」という相談を受けていた。その答えは、またもや新しい。「え、メールアドレスの一番後ろって、スラッシュ(/)つけてもつけなくてもいいんじゃないの?」とのこと。どこのパソコン教室だよ、URLとメルアドが一緒だなんて教えたのは。。。
追記:11月15日20時20分
そういえば、もっとつまづきやすいものを書き忘れていた。メールアドレスの1字の打ち忘れ。例えば、僕のアドレスはaratakojima@gmail.comだが、これのどこかの「a」や「j」などを打ち忘れることがチラホラある。結果、「自分がメールアドレスを打ち間違える可能性はない」+「ブラウザのオートコンプリート機能」という二重コンボで、延々とログインできないこともある。