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NPOやソーシャルビジネスの創業・経営・マネジメント

Google.orgにとっての「利益」の定義

Google.orgの詳細は分からない。ただ、なぜその投資がハイブリッド車なのかが疑問。

池田信夫 blog:Google.orgは社会貢献のイノベーションになるか
グーグルは、貧困・感染症・環境などの社会問題の解決を支援する組織、Google.orgを立ち上げた。これはNPOではなく、社会に貢献する企業に投資するベンチャー・キャピタルのような形で支援を行う営利企業で、個人資産ではなくグーグルの株式の1%を資本としてつくられる子会社である。

池田さんご自身は、上記ブログで営利企業の子会社が非営利の子会社を運営することの是非について問われているが、そのへんは正直僕も分からない。ただ、アメリカでは「Non-Profit Company」という考え方も出ている。Alberta Government Servicesによると、

What is a non-profit company?

Non-profit companies are organizations regulated by the Companies Act. They are formed to promote art, science, religion, charity or other similar endeavors, or they may be formed solely for the purpose of promoting recreation for their members.

会社法によって定義されており、芸術や科学、宗教、慈善事業などを、その母体の従業員やそういった活動に関心がある人たちで行われるということらしい。日本では、一度日経新聞か何かの記述で読んだことがあるだけで、それ以降の出展は見たことがない。一応、日本では、岡山県の朝日塾中学校が初の事例ということになっている。ただ、アメリカの場合はもう少し地域に密着した活動とかをやっているらしいが、詳細は分からない。


まあ、Google.orgがそういったNon-profit companyかどうかは分からないが、いわゆるIT関係の企業がCSRの一環としてそういった活動するのは、特に目新しいことではない。マイクロソフトなんかも、以前からNPOのITサポートをやっていたりする。ただ、僕の疑問は「なぜ、ハイブリッド車なのか」ということだ。


マイクロソフトNPOへのITサポートは、社会貢献的な活動を踏まえつつも、自分たちのIT技術のマーケットへの浸透や自社イメージアップなど、株主が納得できるものでもあると思う。ただ、Google.orgはハイブリッド車を選んだ。


日本でも、バブル前後あたりにメセナという、今のCSRが流行していたが、その時は自社の事業分野とはほとんど関係なく、ボランティア団体などに支援していたらしい。でも、バブルも終わり、「それじゃあ、まずいよね。もう少し自分たちとのセグメントに関係しているものでやろうよ」というような発想からCSRが出てきたのだと思う(このへんは経緯があやふやだけど)


そう考えても、Google.orgの考え方は日本のバブル時代と変わらない。全くの異分野なのだと思う。そりゃあ、もちろん、ハイブリッド車に支援していれば、Googleの名前は上がるし、何かしらのタイアップもできるかもしれない。しかし、Philanthropy Google’s Way: Not the Usual - New York Timesの中では、

But if they didn’t, we wouldn’t care,” he said. “We’re not doing it for the profit. And if we didn’t get our capital back, so what? The emphasis is on social returns, not economic returns.”

と書いてあって、利益を得ようとしているわけじゃあないんだ、お金が戻ってこなかったからと言って、それが一体何なの?経済的な利益ではなくて、社会的リターンを求めているんだよ、みたいなDr. Brilliantという責任者の発言がある。


これは穿った見方かもしれないが、本気でGoogle.orgはこの社会的なリターンを求めているんじゃないだろうか。あくまで勝手な読みだが、「Googleは大きくなった。しかし、これからもベンチャースピリットを大事にイノベーションを起こしていきたい。しかし、Googleもいずれは大企業病みたいなものに罹るかもしれない。どこかで、常にベンチャースピリットを体現しているような人たちとのコネクションを作るべきだ。それが、Google.orgの役目」という感じ。


もちろん、Googleとして世界的な企業になったからこそのCSRの必要性はあるだろう。ただ、その重点がどちらかというと、社内のイノベーションの活性化、ベンチャースピリットの再度の植え付け、といったようなものに重点を置いている気がしないでもない。それが社会的リターンなのかなとも思ったりした。