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Theory of Change(セオリーオブチェンジ・変革の理論)入門

アメリカのNPOはTheory of Change(セオリーオブチェンジ・変革の理論)をめっちゃめっちゃ大事にします。ただ、なぜか、日本にはセオリーオブチェンジが輸入されていないので、The Aspen InstituteのThe Community Builder's Approach to Theory of Changeの触りだけを翻訳したので、公開しておきます。

文面だけではわかりづらいので、実例を見てもらうと分かりやすいかもしれないです。

以下、本文。

追記(2016年11月20日):Theory of Change(セオリーオブチェンジ・変革の理論)の作り方 - TRANSを書きました。

セオリーオブチェンジを理解するための用語の定義

  1. pathway to change(チェンジマップ):長期的なゴールを達成する上での与件として考えられるさまざまな種類の成果の関係性を説明するもの
  2. indicator(指標):成果を測定するために、明確に定めないといけない
  3. intervention(アプローチ):チェンジマップで定められた与件を満たすために使われるもの
  4. assumption(思い込み):あなたの団体のセオリーオブチェンジが本当に機能するのかを説明できないといけない

セオリーオブチェンジをつくるための流れ

1.長期的な成果を明らかにする
  • すでに団体で実施している洗練されたプログラムであったとしても、そのプログラムの最終的な目標についてスタッフの間で意見や考えが異なることもある。
  • 可能な限り明確なものをつくること。「若者のためにさまざまなサービスを提供する」など、あいまいなものを作ってはいけない。
2.チェンジマップをつくる

このタスクのゴールは、長期的なゴールに向かって進んでいく上で影響するさまざまな与件を、チェンジマップの中に落とし込んでいくことだ。考慮するべき点は次のことである。

  1. すべての与件を状況・環境・結果として描くこと。「私たちは〇〇をする」のような行動をこのステップでは書いてはいけない。
  2. 団体のプログラムの詳細をマップに書く必要はない。これはあくまで骨格である。
  3. マップは遡りながら書いていく。最初に考えるべきことは、団体が最終的な目標を達成するためには、社会がどのような状態になっていないといけないのか(=与件)である。自らのプログラムや事業から考えてはいけない。
3.成果を機能させる

チェンジマップの与件を達成するためには、次の質問に答えられなければならない。「成果を上げたと証明するためには、どのようなエビデンスが使えるだろうか」この質問の答えが、進捗状況をチェックし、成果を実証するための指標になる。

指標をつくるための考え方

  • 与件における成功とは、どのような「指標」で測れるだろうか。
  • 誰が、または何が変わってほしいのか(両親、コミュニティの子どもたち、先生、学校など)。その集団があなたにとっての「ターゲット集団」であり、指標を用いて追跡しないといけない。
  • その指標では、ターゲット集団の現在の状況はどのようなものか。これが「基準値」である。
  • 成功したと言えるようになるためには、ターゲット集団がどれくらい変わらないといけないか(それとも少しの変化でも十分だろうか)。これが「しきい値」であり、成果を上げたと言えるようになるためには、その値を超えなければならない。
  • ターゲット集団がしきい値を超えるようになるまでには、どれくらいの時間がかかるだろうか。これが「タイムライン」であり、指標に関するデータを収集し、いつ成功と見なすかを定義づけるものである。
4.アプローチを決める

チェンジマップの成果を達成するための、プログラム、施策、行動を決める。しかし、細かい戦術や改善は議論しないこと。

5.思い込みを洗い出す

団体のメンバーが当然だと思い込んでいることを洗い出す。

  • チェンジマップにおける成果を上げるために、それぞれの与件は本当に必要なのか。長期的な成果を達成するために、今まで考えてきた与件で十分なのか。
  • ターゲット集団やコミュニティに対して、団体のプログラムと成果がきちんと結び付いていると社会科学的な理論から説明できるか。
  • 団体が活動する環境や今までのコンテキストは反映されているか。地域経済、人種問題、交通事情など。

某CMSのプラグインでコケる

いま、いじってる某CMSのサイトで微妙なトラブル発生。あるプラグインの中で正規表現を使って、半角英数字以外をはじくように書かれている。こんなやつです。

preg_match("/^[a-zA-Z0-9]+$/", $str)

これはええねんけど、使われている場所が大問題。ユーザの名前を記入するお問い合わせフォームで使われている。さらにそのサイトは英語のサイトなので名前もアルファベットで記入しないといけない。加えて、名前の記入は必須。

だから、ぼくがその欄に「Arata Kojima」と書こうものなら、確認ページでエラー出ちゃうんですよ。半角スペースがあるから。いやいや、名前をフルネームで書こうとしたら、全員弾かれるやん。

それもエラーメッセージは、「2バイト文字は受け付けないよ!」だけ。いや、そのエラーだと、ほとんどのユーザにとっては意味わかんないから。

このプラグインは開発者の方が個人的に作って、公開していたもののようなので、こういうエラーが起こっても仕方がないとは思います。でも、ぼくがこのエラーを発見したのは、すでに商用として納品されたあとのサイトの中でなんです。たぶん、そのサイトを作った制作会社はダミーテキストを入れてテストすることなく、納品したんだろうな、と。

プラグインは便利だけど、やっぱ動作確認はするべきだという当たり前の結論に至るわけですけど、この数年間にクライアントが逃したお問い合わせは結構な数かもしれないなと思うと、罪だなーと思うわけです。

アメリカ・ポートランド市のつくりかた

アメリカのポートランド市のまちづくりに神戸は習うべきではないか、という意見をちらほら耳にします。ぼくも神戸はどこのまちをマイルストーンとして設定するべきかにはすごく関心があり、ポートランドのまちづくりをちょっと調べてみました。

これができればポートランドになれる!というわけではありませんが、思考の整理にどうぞ。

都市政策

  • 都市成長境界線
  • ポートランド開発委員会 再開発地区の選定と資産価値向上・潤沢な財源
  • アメリカのほかの都市に比べて、1ブロックの長さが短いなどの都市計画
  • 路面電車 ストリートカー・ライトレール(運営はTRIMET) ダウンタウン内は部分的に無料
  • 自転車利用のための整備 駐輪場・専用道
  • パイオニアコートハウススクエアの建設
  • ファーマーズマーケットの運営、都市型農業の推進

住民参加の仕組みづくり

  • コミッション制度 市長と4人のコミッショナーが市議会を運営
  • コミュニティバジェティング 住民とともに予算編成・タウンミーティング
  • ワークショップ・市民会議・公聴会などは夕方以降に実施
  • 若者・移民・チャレンジャー・高齢者・障がい者などをインクルードする
  • 情報公開を徹底
  • シティリペア 交差点などで交流できる拠点づくり
  • ネイバーフッドアソシエーション 自治会が情報を市民に行き渡らせる・開発などの地域に関することの意見を出せる
  • NPOビジョンアクションネットワーク 公共サービスの担い手育成

経済政策

  • ポートランド開発委員会 クリーンテクノロジークラスター戦略
  • シリコンウエハーの生産が強い、インテルの工場あり
  • 観光協会などで自然体験キャンペーン
  • 大手企業の進出や自転車のオーダーメイドショップなどが多数あり

 知的財産

  • ポートランド州立大学との協働推進、キャップストーンの実施 学外ボランティア体験

神戸とポートランドが似ているのは、どちらも行政がかなり積極的に舵取りをしたというところかもしれません。ただ、神戸は阪神淡路大震災でその方向修正を余儀なくされた。

では、今からなにをするべきなのかは、主体ごとに変わってきそうですね(当たり前ですけど)。