Theory of Change(日本では、セオリーオブチェンジ、変革の理論とも)の作り方をTheory of Change(セオリーオブチェンジ)入門 - TRANSに続き、Aspen Instituteから翻訳したものを抜粋しておきます。が、The Community Builder’s Approach to Theory of Changeはリンク先が変わっています(Aspenのサイト上では見つからず)。
プラニングセッションということで、関係者とワークショップをしながら作っていくことを想定しています。以下、本文。
1.長期的な成果を明らかにする
ブレストで最低1時間ほど。1グループは10人以下で構成し、重要なステークホルダーに入ってもらう。講義型ではなく、テーブルを囲むように座る。マーカー、ポストイットを参加者に配布し、部屋には模造紙を準備する。
ブレスト
20分ほどグループで行う。各自が思うことを1つのアイディアにつき1枚のポストイットに書き出そう。全員が終わったら、ポストイットを部屋の模造紙に貼る。
ブレストの際は次の質問が役立つ。
- あるプログラムや構想の最終的なゴールは何か。
- あるプログラムの成功をどのように定義づけるか。
- 資金提供者やプログラムの参加者は、そのプログラムに投資、参加することで何を期待しているか。
- あなたが今日の段階でわかっていることから考えてみて、最終的なゴールを達成することでコミュニティはどのように変わるだろうか。
シェア
参加者に模造紙の前に読みに来てもらうか、グループに向かってファシリが読み上げる
参加者の意見を聞きながら、ポストイットをカテゴリに分けていく
絞り込み
全体的に検討価値があるものかを見てもらう。次のセッションで議論するもの、誤解、検討価値がないものはparking lotにのけておく
投票
残りが少なければ投票してもよいし、参加者に意見を聞いてもよい。グループの同意を得られるまで続ける。
動かす
次の質問を使う。
- 長期的な成果において成功とはどのような指標で測れるだろうか。
- その指標は、どんなターゲット集団に変化が起こることで見極められるだろうか。
- その指標では、ターゲット集団の現在の状況はどのようなものか。
- 成功したと言えるようになるためには、ターゲット集団がどれくらい変わらないといけないか。
- ターゲット集団がしきい値を超えるようになるまでには、どれくらいの時間がかかるだろうか。
2.チェンジマップをつくる
通常は数時間程度必要で、本来は半日のセッションを確保したほうがよい。あまり多くのことを説明せずに、参加者に次の質問に答えてもらうことが目標だ。「あなたの長期的な成果を実現するために、必要かつ十分な与件とはなにか」である。
チェンジマップの最初の1列目をブレストする
一人ひとりにポストイットを渡し、与件を書いてもらって、模造紙に貼る。最終的なゴールに最も近いところにある成果から書き出すことが重要。自分の身近なプログラムや事業から発想するのではなく、最終的なゴールから遡って考える
例:
- 最終的な成果
- 最後から2番目の成果
- 中間の成果
- はじめのほうの成果
- 最初の成果
絞る
ブレストで上がったものの中から最も重要な与件を整理して、4つから6つに絞る。参加者にそれぞれのポストイットをグルーピングしてもらう。グループの考えが最も反映されるように、4つから6つにわける。
終わったら、ファシリテーターがチェンジマップの模造紙の最初の1列目に貼る。
遡る
最初の1列目のそれぞれの要素に対する与件を遡って整える。ここから遡って考えていく作業になる。次の質問を参加者に考えてもらおう。「最初の1列目の成果が達成されるためには、必要かつ十分な与件はなにか」
それから参加者には最も重要な与件を4つから6つを上げてもらい、整理し、模造紙に貼りだす。1度に1つずつの与件をやっていく。
いくつかの与件ができたら、マスキングテープを使って、与件同士の関係性を矢印で引っ張ってみる。あとから書き直すことがあるかもしれないので、マーカーは使わないほうがよい。
深さは最低3、最大5まで。ある与件を選んだ理由などはマップのどこかにメモしておく。
最後の列(または最初の成果)は団体が計画する戦略を反映したものになっているだろう。3から5つのステップをきちんと踏むことができれば、コミュニティを変えることができるはずだ。
ここまでの作業が終わったら、1枚の大きな模造紙に貼りだし、それぞれの与件の関係性をテープで示す。
3.与件を機能させる
多くの成果がチェンジマップにあるのなら、そのうちのいくつかを選ぶ。ほかのものは、小さなグループや宿題としてやればよいだろう。
- きれいにまとまったチェンジマップを部屋の前方に貼りだす。また、小さめの紙に印刷してハンドアウトとして参加者に配布するのもよい。
- 指標、ターゲット集団、しきい値、タイムラインなどの定義を部屋の前方に貼りだして、参加者にそれぞれの定義を説明する。
- 参加者ごとにそれぞれの与件を割り当て、次の質問に対する答えをポストイットに1枚ずつ書いてもらう。
- 成果の状態を測るためにはどのような指標がよいだろうか
- 誰が、または何が変わってほしいのか
- その指標では、ターゲット集団の現在の状況はどのようなものか
- 成功したと言えるようになるためには、ターゲット集団がどれくらい変わらないといけないか。
- ターゲット集団がしきい値を超えるようになるまでには、どれくらいの時間がかかるだろうか。
このときは、参加者にはベースラインに関する質問を行っていない。その質問は正確な計測を必要とするからだ。この場では、それぞれの戦略を練るための基本的な骨格を議論する場である。
参加者には15分くらいでタスクを終了してもらい、グループ内で指標・ターゲット集団・しきい値などについて共有してもらう。最後に、模造紙のチェンジマップの適切な箇所にポストイットを貼ってもらう。
よいアイディアが出なかったり、ちょっとずれたものも出るかもしれない。グループが解決できるようにもっていってみる。ときにはグループが自発的に疑問を呈し、ディスカッションを始めることもあるだろう。
4.プログラムやアプローチを立案する
今までのワークショップで考えたことをベースに、実際にプログラムやアプローチに落とし込む。以下の順番に従う。
- 参加者が成果のうちのどのグループをできるのか、やるのかを決める。決める前に、数分間でチェンジマップの全体を復習しておく。
- できる限り数多くの成果に対する行動、戦略、プログラム、政策を決め、マッピングする。
タスクは小さめのグループか個人に割り振ったほうがうまくいく。それぞれに15分間で考えてもらう。
最後に、それぞれから参加者の前で発表してもらい、ポストイットをチェンジマップに貼る。
重要なのはそのプログラムやアプローチが成果の指標を満たさなければならないこと。
このタスクを行うために考慮しておくべきこと
- チェンジマップの成果を満たすために、どんなプログラムやアプローチが必要だろうか。
- いま、自分たちが取り組んでいるプログラムやアプローチは成果を達成できるだろうか。
- 成果を達成するために政策的な変更や組織間の連携は必要だろうか。
5.思い込みを洗い出す
復習をするようなもので、ちゃんとそれぞれのタスクをできたかを確認する。ファシリテーターは次の質問が役立つだろう。
- 全体像を見たときに、セオリーオブチェンジが本当にうまくいくと思えるか。
- 長期的な成果を上げるために、それぞれの与件が論理的につながっているか。
- それぞれの与件を満たすためにはどのようにすればよいだろうか。
- このセオリーオブチェンジを実施することを難しくするような何かが現実世界で起こっていないか。
さらに以下の質問でセオリーオブチェンジの品質をチェックする。
- セオリーオブチェンジは妥当か。コミュニティの長期的なゴールを達成するための与件にはストーリー性があり、ひとの心に響くだろうか。
- セオリーオブチェンジは実現可能か。チェンジマップの成果を達成するために必要な戦略を実施できるだけのキャパシティとリソースを持っているか。
- セオリーオブチェンジはテスト可能か。ゴールへの進捗状況をきちんと測れるだろうか。研究者や評価者がリサーチプランに落とし込めるような明確な言葉の指標を定義付けているか。