言葉によって人の認識が変わるのは間違いない。でも、そんなことより大事な問題ってあるんじゃないかな。
障害を持っている人を指し示す時に、僕が知る限り、
- 障害者
- 障がい者
- 障碍者
- チャレンジド
という4つの言い方があるようだ。それぞれ、微妙にニュアンスは違っていて、
- 障害者が一番身近な言い方。パソコンでも「しょうがいしゃ」と打つと、この変換しかない。
- 障がい者は「害」という文字が悪いニュアンスだよねってことで、害を平仮名にしたもの。
- 障碍者は戦前まではこの言い方であったが、戦後障害者という言い方になってしまっており、それを改めようという言い方。Wikipediaの障害者の項目が詳しい。
- チャレンジド(Challenged)。障害を天から与えられた挑戦と考えることにより、障害を持つ人をチャレンジする人と言い換えたもの。
と、まあこんな感じだ。
アメリカでは、「disabled」と言っていたものを、最近は「special needs」と言い換えたりする動きも出てきているらしいが、多くの公文書では「disabled」のようだ。それに、細かく分類すると、「special needs」という言い方は知的障害を持つ人たち向けということらしい。
これらの言い方はたくさんあるし、障害者を違う言い方で呼称するのは、別段気に障るわけでもない。人は結局言葉でしか物事を認識できないため、こういった言い方から障害者差別がなくなれば、それはそれでいいことだと思ったりする。
最近、とある役所向けに提案書を作っていて、その一部に「障害者」という記述があった。それを見て、うちのスタッフが言うには、「役所は大体障害者を、障がい者と言い改める傾向にあるから、平仮名使ったほうがいいよ」と言われた。何でも、役所内で使う公的文書以外は、できる限り「障がい者」というのが一般的になっているらしい。
そのときは「ふーん」と思い、言い方を書き換えたのだが、ちょいと疑問に思った。その役所内でそういった教育が行われることは然したる問題ではなくても、それだけの共通認識を持つための時間はどれだけかかっているのだろう。それに、「障がい者」という言い方もまだスタンダードになっている訳ではないし、それが法制化されるわけでもない。言い方はすぐに変わってしまうかもしれないのだ。
そんなことをフツフツと考えていると、優先課題の順序を間違えているような気がしてならなかった。障害者の問題でいえば、緊急の問題は障害者自立支援法案だし、それもかなり地方公共団体の権限が移ると聞く。その対応策が一番の優先課題であるはずだ。もちろん、自立支援法案が出る前からそういった呼称の変更は行われていたのかもしれない。ただ、このへんの役所の対応の順番に何となく不安がよぎった。