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神戸のNPOやソーシャルビジネスの創業・起業のお手伝い

イノベーションと起業家精神/P・F・ドラッカー

書評

 ■イノベーションの機会は7つ

1.予期せぬことの生起。予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事
2.ギャップの存在
3.ニーズの存在
4.産業構造の変化
5.人口構造の変化
6.認識の変化。ものの見方、感じ方、考え方の変化
7.新しい技術の出現
信頼性と確実性の大きい順
 
 
■予期せぬことの生起
 
○予期せぬ成功
体系的に探求しないと気づかない。機会でもあり、要求でもある。
1.これを機会として利用することは、自社にとってどんな意味があるか
2.その行く先はどこか
3.そのためには何を行わなければならないか
4.それによって仕事のしかたはどのように変わるか
 
○予期せぬ失敗
慎重に計画し、設計し、実施したものが失敗したときはその失敗そのものが、変化とともに機会の存在を教えてくれる。競争相手も同じように見ておく。
「分析できるほどはまだわからない。外に出かけ、観察し、質問し、聞いてくる」
 
○外部の予期せぬ変化
イノベーションとして利用できるかは、その機会が自らの事業の知識と能力に合致していること
大企業は最小のリスクで最大のイノベーションを起こせるはず
 
 
■ギャップを探す
ギャップは1つの産業、市場、プロセスの内部に存在する。その産業や市場、周辺にいる者にははっきりと認識できるが、その内部にいる者は「ずっとそうだった」と言う。そのずっとは最近だったりする。
 
○業績ギャップ
順調に成長している市場なのに、業績が上がっていないのであれば、なんらかのギャップが存在する。
原因を知る必要はない。「このギャップをイノベーションの機会として利用するためにはどうするべきか。何がそれを機会に変えてくれるか。何ができるか」
 
○認識ギャップ
ある産業の内部の人たちがものごとを見誤り、現実について誤った見方を持っているとき、努力は間違った方向に向かう。それに気づき、利用する者にとって認識ギャップを利用できる。
 
○価値観ギャップ
その背後には、傲慢と硬直、独断がある。ex日本人が一家に一台テレビを持つことなんてない。
 
○プロセスギャップ
顧客の声に真剣に耳をかたむけること。プロセスギャップは、その業界の中にいる人たちのみである。
 
 
■ニーズを見つける
 
○プロセスニーズ
課題からスタートする。すでに存在するプロセスの弱みや欠点を補う。ex 植字機 出版物は多かったものの、植字のみ熟練工を必要とした
 
○労働力ニーズ
ex 電話交換手が圧倒的に足りない←交換手を必要としない自動交換機の開発
 
○知識ニーズ
開発研究。明確に理解し、明確に感じることのできる知識が欠落している。的を絞るほどよい結果が出る。
 
○ニーズにもとづくイノベーション(特にプロセスニーズ)が成功するための前提
1.完結したプロセスについてのものであること
2.欠落した部分や欠陥が一箇所だけあること
3.目標が明確であること
4.目標達成に必要なものが明確であること
5.もっとよい方法があるはずとの認識が浸透していること=受け入れの態勢が整っていること
 
○成功の条件
1.なにがニーズであるのかが明確に理解されていること
2.イノベーションに必要な知識が手に入ること
3.問題の解決策が、それを使う者の仕事の方法と価値観に一致していること ex 弁護士向け判例のデータベースなど
 
 
■産業構造の変化を知る
その産業の外にいる者に対し、例外的ともいうべき機会を与える。内部にいる者にとっては、その同じ変化が脅威に見える。
リーダー的な供給者や生産者は、必ず市場の中で成長しつつある分野を軽く見る。
 
○変化の兆候
1.急速な成長。ある産業が経済成長や人口増加を上回る速さで成長するとき。
2.時を同じくしてそれまで業界トップだった企業の市場の捉え方が現実を反映せず、歴史を反映したものになる。
3.いくつかの技術が合体したとき。 ex 構内交換機(電話とコンピューター)
4.仕事のしかたが急速に変わるとき。 ex 医師が個人経営から共同経営などに乗り換える
 
○成功の条件
単純でないといけない。複雑なものは失敗する。
 
 
■人口構造の変化
人口の増減や年齢構成、雇用や教育水準、所得など人口構造の変化は明白。
いかなる製品が、誰によって、どれだけ購入されるかに対し、大きな影響を与える。
予測は難しくても、構造の変化が社会に影響を与えるまでには、リードタイムがある。
イノベーションの機会となるのは、既存の企業や団体がそれを無視してくれるから。
分析方法は人口にかかわる数字、年齢構成が重要である。人口の重心の移動が大事。
統計だけではなく、現場に行き、見て、聞くべき。
 
 
■認識の変化をとらえる
世の中の認識が「半分入っている」から「半分空である」に変わるときに機会が生まれる。 ex 平均余命や癌の発生率が変化しているのに、アメリカ人が健康ノイローゼにかかっている。
実体は変わらず、認識が変わる。
タイミングが決定的に重要。
認識の変化と見えるものの多くは、一時的な流行にすぎない。そのため、小規模に、かつ具体的に着手しないといけない。
 
 
■新しい知識を活用する
ほとんどの場合、必要なろもろもろの知識が出揃い、どこかで使われるようになったとき。
イノベーションを行おうとする者が、欠落した部分を認識し、自らそれを生み出すこともできる。
 
○特徴
1.リードタイムがきわめて長い。25年から35年。
 外部から危機がやってきたときのみ短縮される。 ex 戦争など
 科学技術以外の知識にも言える 
2.科学や技術以外の知識を含め、いくつかの異なる知識の結合によって行わる。 ex 飛行機 自動車の動力と空気力学。それらはまったくの別物。
 
○特有の条件
1.知識そのものに加え、社会、経済、認識のすべての要因分析をする必要がある。
 いかなる要因が欠落しているのかを分析し、それを手に入れられるか、延期するべきかを検討する。
2.戦略を持つ。
 システム全体を自ら開発し、それをすべて手に入れる。 ex ポラロイドカメラ
 システム全体ではなく、市場だけを確保する。
 戦略的に重要な能力に集中し、重点を占拠する。 ex インテル
3.マネジメントを学び、実践する。
 
○開放期
きわめて長期に、今にもイノベーションが起こりそうでありながら何も起こらない期間が続く。突然、爆発が起こる。数年間にわたる開放期があり、事業が乱立され、華々しく焦点があてられる。5年後には整理が始まり、ごくわずかな企業が生き残る。
 時間が敵。失敗は許されない。
 開放期が混み合ってきたので、生き残りの確率が小さくなった。
 
 
■イノベーションの原理
 
○なすべきこと
1.機会の分析。
2.外に出て、見て、質問し、聞くこと。イノベーションは理論的な分析でもあり、知覚的な認識の問題でもある。
3.単純かつ具体的なものに絞る。
4.小さくスタートする。
5.最初からトップを狙う。
 
○なさぬべきこと
1.利口過ぎないこと。普通の人間が利用できること。
2.多角化しない。一度に多くのことをしない。
3.明日のためにイノベーションを行わない。現在のためにイノベーションを行う。
 
○成功条件
1.仕事でないといけない。 ex エジソンですら電気分野でしかできなかった。
2.強みを基盤とする。「自分や自社に最も適した機会はどれか。自分たちが最も得意とし、実績によって証明済みの能力を生かせる機会はどれか」
3.経済や社会を変える。
 
 
■起業家精神のためのマネジメント
イノベーションにとっての障害は、既存の事業そのものであり、成功している事業である。
 
○起業家精神発揮のための条件
1.イノベーションを受け入れ、変化を脅威ではなく、機会とみなす組織をつくる。
2.イノベーションの成果を体系的に測定する。少なくとも評価する。
3.組織、人事、報酬について、特別の措置を講じる。
4.いくつかの行なってはならないことを知る。
 
○経営政策
1.活力を失ったもの、陳腐化したもの、生産的でなくなったものを廃棄するための制度化
 今日これから、この製品、市場、流通チャネル、技術を手掛けるか。ノーであれば、その活動に資源を浪費しないためにはどうするべきか。
2.製品、サービスなどにそれぞれライフサイクルがあることを前提として、現状を分析し、把握すること
3.いかなるイノベーションをいかなる領域において、いかなる期限で行う必要があるかを明らかにする
 イノベーションの規模は、目標とする成果の3倍に設定すること
4.イノベーションの目標と期限について起業家として計画をたてる
 
○経営政策の具体的な内容
1.マネジメントの目を機会に集中させること。今日、マネジメントに提示されるのは問題ばかりである。本来は業績が上回った分野を提示するべき。
2.二日間におよぶ戦略会議を開催。とくに成功の要因を報告する。「何を行ったか」「いかに機会を見つけたか」「何を学んだか、現在どのようなイノベーションの計画を持っているか」
3.トップマネジメントが若い人たちと会っている。
 若い人向けの提案会を開催。製品や工場、市場やサービスについて何か新しいこと、新しい仕事のしかたを提案する者には、提案の具体化についても責任を持たせること
 
○イノベーションの評価
業績評価の中にイノベーションの成果についての評価を組み込まないといけない。
1.それぞれのプロジェクトに成果を期待にフィードバックする。
2.イノベーションにかかわる活動全体について、定期的に点検する。
3.イノベーションの成果全体を、企業全体のイノベーションにかかわる目標や市場における地位、企業全体の業績との関係において評価する。
 既存の企業にとっては「イノベーションにおいてリーダーシップをとっているか」「少なくともリーダーシップを維持しているか」
 
○組織構造
起業家的な事業は、既存の事業から分離しないといけない。
核となる人は、かなり高い地位にあること。専任ではなくてよい。
当初の報酬は、新しい事業を担当する直前に合わせる。成功した際には相応の地位、ボーナス、ストックオプションの付与などを与える。失敗しても元の仕事、元の報酬に戻れるようにする。
イノベーションにかかわる全責任を1人の人間や1つの単位組織に持たせる。中小企業であればCEO、大企業ではトップマネジメントの1人や小会社など
 
○行なってはならないこと
1.管理部門と起業家的な部門を一緒にすること
2.特に大企業は起業家と組んで合弁事業を行なってもあまり成功していない。自社の人材のほうが成功している。組織がイノベーションを欲していないといけない。
3.得意な分野以外で行うこと。
4.買収によって行うこと。買収はかなり早い段階でマネジメントを送り込まない限り成功しない。
 
 
■社会的機関における起業家精神
 
○既存の事業がイノベーションの障害となりやすい原因
1.成果ではなく予算で活動する。活動の一部を捨てることは、縮小を意味する
2.利害関係者が多い。既存の事業者から反対を受けやすい。
3.自らの使命を絶対的存在とみなし、経済的な費用効果の対象としてみない。
 つまり、自らを最適化ではなく、最大化する。目標が最大化にあっては、目標は絶対に達成できない。
 
○起業家原理
1.明確な目的を持つ。自分たちはなぜ存在しているのか。
2.現実的な目標を持つ。空腹の絶後ではなく、飢餓の減少。
3.いつになっても目標を達成できないのであれば、目標を再点検する。
4.イノベーションの機会を自らの活動に組み込む。
 
 
■ベンチャーのマネジメント
 
○原理
1.市場に焦点を合わせる
2.財務上の見通し、特にキャッシュフローと資金について計画を持つ
3.トップマネジメントのチームを、実際に必要となるはるか前から用意する
4.創業者自身が自らの役割、責任、位置づけを決断する
 
○市場志向
ベンチャーが成功するのは、多くの場合、考えてもいなかった市場で、考えてもいなかった客が、考えてもいなかった製品やサービスを、考えてもいなかった目的のために買ってくれること。
まったく新しいものは市場調査できない。
市場志向であるためには、実験が必要。その製品やサービスを実際に使ってくれる人を探す。
 
○財務上の見通し
財務政策の欠如は、成長の次の段階の最大の病気になりうる。
1.今日のための現金がない
2.事業の拡大資金がない
3.支出や在庫、債権を管理できない
成長するということは資金の不足を意味する。現金と資本が必要。利益は虚構である。
キャッシュフローの分析と予測と管理を必要とする。
最悪のケースを想定し、常に1年先を見て、どれだけの資金がいつ頃、なんのために必要になるかを知らないといけない。
債務は思ったより2ヶ月早く決済しないといけず、債権は2ヶ月遅く決済されるという経験則がある。
 
○フランチャイズ成功の原則
1.事業単位をそれぞれできるだけ早く、遅くとも2、3年以内に採算にのせる
2.素人のフランチャイジーなどマネジメント能力がなくても、本部からの指示なしでもマネジメントできるよう、事業内容を定型化しないといけない
3.事業単位のそれぞれが、かなり早い時期に追加資金を必要とせず、次の事業単位を資金的に助けられないといけない
 
○トップマネジメントチームの構築
前もって構築すること。3年以上かかる。
1.創業者が、事業にとってとくに重要なことについて、主な人たちと相談する
2.創業者を含む主な人たちが「自分が得意とするものは何か、ほかの人たちが得意とするものはなにか」を考える
3.「それぞれの強みに応じていずれの活動を担当するべきか、誰がどの活動に適しているか」を考える
4.最後に、重要な活動のすべてについて、目的と目標を定める
はじめの1年はこのマネジメントチームを非公式とする。2、3年後にはマネジメントチームが必要となったときに、すでに存在している。
うまくいかないケースは、1.創業者が能力と関心をもつ1つか2つに没頭している、2.良心的すぎて、自分の能力にあったものを行わない
 
○創業者の貢献
「なにをしたいか」「自分は何に向いているか」ではない。「客観的に見て、今後、事業にとって必要なことは何か」
 
 
■起業家戦略
 
○総力による攻撃
市場の支配、新しい市場を創造することを目指す。外部の門外漢は通念を知らないため、うまくいきやすい。
うまくいけば、もっとイノベーションの努力をしないといけない。
成功すれば、自らの手で自社製品を陳腐化しないといけない。さらに価格を下げ続けなければいけない。
 
○弱みへの攻撃
創造的模倣:だれかが新しいものを完成間近まで作るのを待つ。短期間で顧客が満足し、代価を支払ってくれるものをつくり、標準となる。
最初にイノベーションを行ったものが、すべてのことを行い、市場を専有してしまっていることはそれほど多くない。
すでに存在している需要を満たすのであって、需要そのものを満たすわけではない。
 
起業家的柔道:ユーザー別の機器によって、最大化ではなく、最適化を図り、市場を持っていく。
特に成功する状況は、1.トップ企業が予期せぬ成功や失敗を見過ごす、2.新しい技術が出現し急成長するが、創業者利益を取るがために、価格を下げない、3.市場や産業が構造変化するとき。
業界とメーカー、取引先、商慣習、特に間違った商慣習などの経営分析から入る。市場を調べ、戦略に対する抵抗が最も小さく、成功しそうな分野を探す。
 
○ニッチの占拠
関所戦略:製品がいずれかのプロセスにおいて不可欠であり、製品の価格よりも圧倒的に大きなリスクを有するもの。
最初にその市場を占めたものが占拠できるほどの大きさである。大きな成長は見込めず、急激な需要の減速が起こることもある。
 
○専門技術戦略
生態学的なニッチによって支配地位を確立する、技術の標準となる。 ex 自動車部品メーカー
1.新しい産業、習慣、市場、動きが生まれる揺籃期にスタートしないといけない。
2.独自、かつ異質の技術を持たないといけない。
3.絶えずその技術の向上に努めないといけない。
しかし、1.自らの専門領域のみになり、2.誰かほかのものに依存しないといけない、3.専門技術が一般技術になってしまうことがある。
 
○専門市場戦略
専門技術戦略の「市場」版。市場に関する特殊な知識を有する。
自らが成功することで専門市場が大衆市場になることがある。 ex トラベラーズチェック
 
■価値の創造
1.効用戦略
2.価格戦略
3.顧客戦略
4.価値戦略
イノベーションと企業家精神―実践と原理

イノベーションと企業家精神―実践と原理